骨伝導補聴器の特徴

骨伝導補聴器とは、骨を振動させて音を伝える方法の補聴器です。

基本的に補聴器は音を伝える方法として「気導式」と「骨導式」の2種類となります。国内に流通している約99%が気導式。なぜなら、骨伝導補聴器は使用者によってはほとんど効果がないためです!しかしその一方で、耳の状態によっては抜群の効果を発揮することがあるのはご存知でしたか?

今回、補聴器店のアドバイザーである私が骨伝導補聴器について、耳と難聴について、メリット・デメリット、種類まで網羅的にご紹介します。ここを見て頂くと、骨伝導補聴器についての基礎から専門的知識まで把握することができますよ。

最初に改めて、耳の仕組みからご説明します。

この記事を書いた人
山田 元一(やまだ もとかず きこえのお助け隊
「最近聞こえが悪くなった…」このような悩みをお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。しかし、聞こえについて相談できる人や、機会はそう多くないのが現状。これまで補聴器の相談を100件以上承ってきた私が、補聴器や聞こえ全般に関する情報を余すことなくお伝えいたします。


<目次>

  1. 耳の状態によって装着できない骨伝導補聴器
    1. 耳の仕組み
    2. 難聴の種類
  2. 骨伝導補聴器の仕組みと種類
    1. 骨伝導補聴器の仕組み
    2. 骨伝導補聴器のメリット・デメリット
    3. 骨伝導補聴器の種類
  3. まとめ

耳の状態によって装着できない骨伝導補聴器

骨伝導補聴器について説明する前に、耳が音を聞く仕組みを把握しておくことはとても重要です。なぜなら、骨伝導補聴器が骨を揺らして音を聞くと言っても、耳の仕組みを利用しているためです。

そのため、最初に耳が音を聞く仕組みから改めて把握しておきましょう。

耳の仕組み

耳は、手前から奥の順番に外耳、中耳、内耳、聴神経に分かれます。外耳は、外見上から見てとれる私たちが耳と呼ぶ部分です。


音は外耳から入ると、中耳の入り口に塞がっている鼓膜までまっすぐ進みます。鼓膜にぶつかった音は、太鼓のように中耳内の空気を振動。空気の振動で伝えられた音は、内耳にある蝸牛に届きます。蝸牛はカタツムリのような形状をしており、中はリンパ液と有毛細胞という音を感じ取る細胞があるのです。

鼓膜の振動は、蝸牛内のリンパ液と有毛細胞を揺らします。有毛細胞がこの揺れを電気信号に変換し、次の聴神経に伝えます。聴神経は、有毛細胞から受け取った電気信号を脳に届けます。脳は受け取った電気信号を処理し、ようやく私たちは周囲の音を聞くことができるのです。このように、空気を利用して聞く音を気導音と呼びます。気導音で聞き取りできる聴力レベルが気導閾値です。

この一連の流れのどこかに障害があると、聞こえが悪くなり難聴を発症します。障害がある場所(難聴)によっては、骨伝導補聴器は耳本来の仕組みを利用できず効果を発揮できません。そのため次に難聴の種類についてご説明します。

難聴の種類

難聴の種類は、基本的に次の3種類です。

種類 箇所 原因
伝音性難聴 外耳から中耳 中耳炎、鼓膜の損傷、中耳や外耳の奇形など
感音性難聴 内耳から聴神経 加齢による有毛細胞の減少、突発性難聴など
混合性難聴 外耳から聴神経 慢性中耳炎、耳硬化症など


外耳から中耳の、音が伝わる箇所に原因がある難聴を伝音性難聴。内耳から聴神経の音を感じ取る箇所に原因がある難聴が感音性難聴です。伝音箇所と感音箇所の両方に原因がある難聴を混合性難聴と言います。

上記の3種類の難聴で、骨伝導補聴器が有用になるのは伝音性難聴です。感音性難聴と混合性難聴の場合、骨伝導補聴器を使用してもうまく音を聞くことができません。

なぜなら、骨伝導補聴器は「伝音箇所」の役割を補うためです。


詳しくは次でご説明します。

骨伝導補聴器の仕組みと種類

骨伝導補聴器の仕組み

冒頭で補聴器の仕組みは「気導式」「骨導式」の2種類に分かれるとご紹介しました。気導式と骨導式は、音が伝わる聴覚経路が次のように違います。

気導式:外耳→中耳→内耳(蝸牛)→聴神経→脳
骨導式:側頭骨(頭がい骨)→内耳(蝸牛)→聴神経→脳

気導音の流れを使用するのが気導式。骨導式は、側頭骨を揺らすことで外耳・中耳を使用せず、直接内耳に音を伝えることができる方法です。骨導によって聞こえる聴力レベルを骨導閾値と言います。骨導閾値は骨導聴力検査で測定することが可能です。

実は骨伝導は普段から私たちも聞いているのはご存知でしたか?

基本的に普段から私たちは「気導音」「骨導音」を合わせて聞いているのです。例えばボイスレコーダーに録音した自分の声が、普段聞いている音と違うように感じることがあります。それは、ボイスレコーダーに録音された音が「気導音」のみだからです。そのため、録音した音が違うように感じるのです。

骨導音は、耳の穴を指で塞いで声を出すと感じることができます。耳穴を塞いでいるため周囲の音は聞こえません。しかし自分の声は聞くことができます。それは、骨伝導で音が伝わっているためです。

また、骨伝導補聴器は骨を揺らすために、振動板と呼ばれる機械で側頭骨を挟む必要があります。振動板で側頭骨を振動させることで、中耳にある蝸牛内のリンパ液を揺らすのです。

骨伝導補聴器は、外耳・中耳を使用しないので、この箇所に問題がある伝音性難聴の方に非常に有効な方法となります。例えば、外耳が小さいもしくは欠けている小耳症の方、生まれつき耳孔がない方、鼓膜から内耳へと音を伝える「耳小骨」の動きが鈍くなってしまった方などが挙げられます。

しかし、内耳から聴神経は使用するため、この箇所に問題がある感音性難聴の方は、骨伝導の効果をほとんど感じることができません。このように、骨伝導は耳の状態や使用者を選ぶ補聴器なのです。また、伝音性難聴の方でも骨導閾値が規定値(0~20dB)以内に入っていなければ骨伝導補聴器を使用することができません。

ここまでの説明で、骨伝導について把握頂けたことかと思います。

次に骨伝導補聴器について詳しくご説明します。

骨伝導補聴器のメリット・デメリット

骨伝導補聴器は、メガネ型やカチューシャ型などが一般的。種類については後ほどご説明します。耳を塞がないことが最大の特徴である骨伝導補聴器ですが、メリットがある一方でデメリットもあります。

下記で確認しましょう。

メリット 耳を防がない(快適性、かゆみなどの炎症を防ぐなど)
自分の声を響くのを防ぐ
デメリット 感音性難聴の方は使用できない
高度・重度難聴の方が使用できないことが多い
頭をしめつける必要がある
位置がずれると聞こえにくくなる

骨伝導補聴器は、耳を防がないため解放感があり自分の声の響きを感じません。伝音性難聴で骨導閾値が良い方が、耳を防ぐ気導式補聴器を使うと自分の声の響きが気になることがあるのです。また、音のこもり感もなく耳自体に解放感もあります。

その一方で、骨伝導補聴器は骨を揺らす振動板を適切な位置に当てておく必要があります。物や人にぶつかり、振動板がずれると、音が聞こえにくくなるのです。また、ある程度強めに締め付けないと音を骨にうまく伝達させることができません。この調整加減によっては耳の裏側が痛くなることも…。

このように、耳を防がないというメリットの反面、側頭骨の適切な場所に振動板を当てておく必要があるというデメリットもあります。

また、骨伝導が有用になる伝音性難聴は、原因によっては手術で治る可能性があるのです。そのため、骨伝導補聴器は耳鼻咽喉科で受診された上で購入に進まれることをおすすめします。

以上、骨伝導補聴器のメリット・デメリットをご説明しました。骨伝導補聴器は、骨を揺らすため頭が痛くなるなどのデメリットがあります。ただ、中には頭蓋骨にねじを埋め込んで装着するタイプもあるのですよ。

次の骨伝導補聴器の種類の中でご説明します。

骨伝導補聴器の種類

骨伝導補聴器の種類は基本的に次の通りです。

・メガネ型・カチューシャ型

・骨固定型補聴器(baha)

・軟骨伝導補聴器

次で、上から順番にご説明します。

メガネ型・カチューシャ型補聴器

メガネ型・カチューシャ型は、名前の通りメガネとカチューシャの形をした補聴器です。眼鏡型はツルの部分に振動板が、カチューシャ型は一番下についています。主に軽度から中等度難聴の方が対象の補聴器。なぜなら、大きい音を出すと本体ががたがたと震えてしまうためです。

骨伝導補聴器の中では最も主流のタイプで、20万円ほどで購入することができます。

骨固定型補聴器(baha)

骨固定型補聴器(baha)は、頭蓋骨にチタン製のねじを埋め込み、音を聞く補聴器です。頭から露出したねじに、取り外しのできるサウンドプロセッサという本体をはめ込めます。サウンドプロセッサがねじを振動させて音を伝えるのです。

bahaは、頭がい骨にねじを埋め込む必要があるため病院で手術を必要。手

術は保険の適応ですが、次のように対象者が決められています。

・両側外耳道閉鎖症、両側耳硬化症、両側真珠種または両側耳小骨奇形の方

・既存の手術による治療および既存の骨導補聴器を使用しても改善が見られない方。

・片耳の平均骨導聴力レベルが45db以内。

・18歳以上である、両側外耳道閉鎖症で保護者の同意が得られた場合15歳以上も対象。

上記に全て該当する方がBahaの手術を受けることができます。

手術としては危険度が低く、多くの方が数日で退院することが可能です。ただ、ねじが露出しているためどうしても感染症のリスクがゼロではないことや、頭部に補聴器本体を装着するので気になる場合があります。

軟骨伝導補聴器

軟骨伝導は、外耳の軟骨部分に振動子(振動板)を当てて音を聞く補聴器です。厳密に言うと「骨導式」とは違い「軟骨導」の扱いとなります。「軟骨導」は「気導式」「骨導式」に加えて、第3の聴覚経路として扱われているのです。

骨伝導補聴器は、振動版が大きく目立ちやすいことや、頭を圧迫することで痛みなどがあるデメリットがありました。しかし、軟骨導は耳かけ型の先端を振動子に変えるだけで小型です。また、頭を挟み込む必要もないので装用の負担を減らすことができます。

ただ、新しい技術のために軟骨導補聴器の取り扱いは非常に少ないです。現在は日本企業であるリオンが販売しています。

以上、骨伝導補聴器の種類についてご紹介しました。このような骨伝導の技術は昔から使われていました。耳を塞がると問題があり兵士や消防士の間の通信手段として使われていたのです。最近では、大手オーディオメーカーなどが骨伝導を利用したイヤホンやヘッドホンを販売しています。

多くは音楽鑑賞用のイヤホンとヘッドホン。大音量で音楽を聴いていると、耳の鼓膜を痛めて難聴を引き起こしたり、車の状況などが把握できず事故を起こしたりする原因でした。

骨伝導のイヤホンやヘッドホンを使用すると、これらの危険性を軽減することができるため注目されています。

このように、骨伝導の技術は向上を続けています。補聴器だけでなく身近なところでも体験することができるのですね。

最後に今までの内容を簡単に振り返りましょう。

まとめ

ここまでの簡単なまとめは下記の通りです。

・補聴器の種類は「気導式」「骨導式」の2種類

・気導式は空気を利用して音を聞く補聴器

・骨導式は骨を揺らして音を聞く補聴器

・骨伝導補聴器は、伝音性難聴のみ使用できる

・骨伝導補聴器は耳を塞がないことがメリット

・骨伝導はメガネ型の販売が一般的


補聴器の種類の中でも非常に珍しいのが骨伝導式補聴器となります。

上記のポイントを抑えて頂くと、骨伝導補聴器の基礎から専門知識まで把握したのも同然です。


当記事があなたの参考になれば幸いです。

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