補聴器は保険の対象?購入時の給付制度についてご紹介!

「補聴器購入に保険は適用されるの?」

上記のようなご質問をお客様からよく頂きます。しかし残念ながら、補聴器の購入は保険適用外です。基本的に補聴器購入では、生命保険や健康保険、または介護保険などの適用を受けることはできません。

補聴器は平均購入価格15万円と、非常に高価なもの。できる限り費用の負担は軽くしたいですよね。保険は適用外ですが、実は補聴器を購入するにあたり、補助や助成金制度があることはご存知でしょうか?こういった制度などを利用することで、費用の負担を軽くすることが可能となっています。

そこで今回は補聴器店のアドバイザーである私が、補聴器の補助と助成金制度についてご説明させて頂きます。補助と助成金制度について把握することで、費用の負担を減らして補聴器を購入することができます。
では最初に、補助と助成金制度の種類をご紹介します。
この記事を書いた人
山田 元一(やまだ もとかず きこえのお助け隊
「最近聞こえが悪くなった…」このような悩みをお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。しかし、聞こえについて相談できる人や、機会はそう多くないのが現状。これまで補聴器の相談を100件以上承ってきた私が、補聴器や聞こえ全般に関する情報を余すことなくお伝えいたします。

<目次>

  1. 保険以外の補聴器購入の補助・助成金制度
  2. 障害者総合支援法による給付
    1. 障害者総合支援法
    2. 補聴器の交付手続きの流れ
  3. 自治体独自の支援策による給付
  4. 医療費控除を行う
    1. 医療費控除とは
    2. 医療費控除申請の流れ

保険以外の補聴器購入の補助・助成金制度

補聴器の購入に、健康保険や介護保険などの適用は受けることは現在できません。ただ、あまり知られてはいませんが、補聴器の購入には、購入補助や助成金制度が受けられる場合があります。

一般的な補聴器の補助、助成金制度は次の通りです。

・障害者総合支援法
・自治体独自の支援
・医療費控除

それでは次で、上から順にご説明します。

障害者総合支援法による給付

障害者総合支援法

障害者総合支援法とは、障害者が日常生活や社会生活を、総合的に支援するための法律です。障害者総合支援法に定められた、補装具費支給制度により補聴器購入費用が支給されます。

障害者総合支援法を利用するには、障害者手帳の交付を受ける必要があります。障害者手帳の交付が認定される、難聴レベルは下記です。

級別 聴覚障害
2級 両耳の聴力レベルがそれぞれ100デシベル以上のもの(両耳全ろう)
3級 両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの(耳介に接しなければ大声語を理解し得ないもの)
4級 1 両耳の聴力レベルが80デシベル以上のもの(耳介に接しなければ話声語を理解し得ないもの)
2 両耳により普通話声の裁量の語音明瞭度が50パーセント以下のもの
5級 (平衡機能の著しい障害) 
6級 1 両耳の聴力レベルが70デシベル以上のもの(40センチメートル以上の距離で発生された会話語を理解し得ないもの)
2 一側耳の聴力レベルが90デシベル以上、他側耳の聴力レベルが50㏈以上のもの


上記に該当し、障害者手帳をお持ちの方のみ、補聴器費用が支給されます。ただ、購入できる補聴器の価格もある程度定められております。次の表が補聴器種類別の購入基準価格です。

補聴器購入基準価格表

名称 価格(円)
高度難聴用ポケット型 34,200
高度難聴用耳かけ型 43,900
重度難聴用ポケット型 55,800
重度難聴用耳かけ型 67,300
耳あな型(レディメイド) 87,000
耳あな型(オーダーメイド) 137,000
骨伝導式ポケット形 70,100
骨導式眼鏡型 120,000


上記の金額が、各補聴器の種類別に支給されます。基本的には1割が自己負担となります。

購入する補聴器の金額が、基準価格から超えた場合、差額分を自分で支払うことで購入することも可能です。ただ自治体によっては、基準価格以上の補聴器購入が認められていない自治体もあります。補聴器の費用については自治体によって様々ですので、詳細はお住まいの自治体まで、お問合せ頂けると幸いです。

次は実際に、障害者手帳の交付から補聴器代金の支給までの流れについて説明します。

補聴器の交付手続きの流れ

障害者支援法により、補聴器の補助金を受けるには身体障害者手帳が必要です。身体障害者手帳を取得した後に、補聴器交付の手続きに進みます。下記が、障害者総合支援法による、補聴器購入までの補助金の交付まで流れです。

障害者総合支援法による、補聴器購入までの流れ

1 障害福祉窓口に書類を取りに行く
2 指定医による診察を受ける
3 障害福祉窓口で書類の提出する
4 障害福祉窓口で身体障害者手帳の交付
5 障害福祉窓口に書類を取りに行く
6 指定医による診察を受ける
7 補聴器販売店で、希望する補聴器の見積書を依頼する
8 障害福祉窓口で書類の提出する
9 補聴器販売店で補聴器を購入する

次で、上から順に説明します。

1 障害福祉窓口に書類を取りに行く

障害福祉窓口で「身体障害者診断書・意見書」の書類を受け取りにいきます。また障害福祉窓口は、地域によっても名前が違うので注意が必要です。

2 指定医による診察を受ける

障害者手帳交付の診断は、県が指定した指定医である必要があります。全ての病院で診断書が作成できるわけではありません。事前に障害福祉窓口で聞いておくことがおすすめです。

指定医に「身体障害者診断書・意見書」を記入してもらいます。

3 障害福祉窓口で書類を提出

「身体障害者診断書・意見書」を記入してもらうと、次は、障害福祉窓口に身体障害者手帳の交付申請です。

必要な書類は基本的には、下記となります。

必要書類 ・身体障害者診断書・意見書
・交付申請書
・本人写真
・印鑑
・マイナンバー

書類を提出すると、約1ヶ月から3ヶ月ほど都道府県の身体障害者構成相談所にて、内容審査と等級判定が行われます。

4 障害福祉窓口で身体障害者手帳の交付

審査後、障害福祉窓口で身体障害者手帳の交付です。ここまでが身体障害者手帳の交付手続きでした。次は補聴器交付の手続きに進みます。

5 障害福祉窓口に書類を取りに行く

障害福祉窓口で「医学的意見書」の書類を受け取りにいきます。

6 指定医による診察を受ける

指定医の診察から「医学的意見書」を記入してもらいます。

7 補聴器販売店で、希望する補聴器の見積書を依頼する

販売店に「医学的意見書」を持参し、診断書に基づいた補聴器を選びます。希望する補聴器を選択し、販売店に見積書を作成してもらいます。

8 障害福祉窓口で書類の提出する

補聴器の見積書ができると、障害福祉窓口で「補装具費支給券」の書類申請です。必要な書類は基本的には、下記となります。

必要書類 ・申請書
・医学的意見書
・補聴器の見積書
・世帯状況・収入等申請書
・身体障害者手帳

審査の期間は約1ヶ月ほどです。給付の許可が下りれば「補装具費支給券」が自宅に届きます。

9 補聴器販売店で補聴器を購入する

補聴器販売店には、補装具費支給券と負担金額、印鑑を持っていき、見積書にある補聴器を購入します。

※手続きの仕方は各自治体によって異なる場合があります。詳しくは各市区町村の福祉課までお問合せ頂けると幸いです。

以上が、障害者総合支援法におよる補聴器の交付手続きの流れでした。身体障害者の基準は厳しく、重度の難聴ではないと、ほとんどが手帳の交付をうけることができません。 

そこで次は、障害者総合支援法より補聴器の補助や助成制度を比較的に受けやすい自治体独自の支援策についてご紹介します。

自治体独自の支援策による給付

補聴器の補助や助成制度が、各自治体の取り組みとして近年広まっています。自治体の目的としては、高齢者の生活の質の向上です。

また高齢者だけでなく、若年層の言語発達を損なわないように、若年層に向けた支援を行っている自治体もあります。基本的には18歳未満の子供を対象としていることが多いです。

下記は、各自治体の補聴器補助、助成制度の一例です。

市区町村 対象者 条件
岩手県遠野市 高齢者の難聴者 60歳以上
両耳の聴力レベルが55デシベル以上、70dB未満で治療による改善が見込めない人
原則1割自己負担
東京都江東区 高齢者の難聴者 65歳以上
区で定める所得以下(聴力の検診を行い医師が必要を認めた人に支給)
愛知県東海市 若年層の難聴者 交付申請をする日において18歳未満であること
両耳の聴力レベルが30デシベル以上で、かつ、身体障害者手帳の交付の対象とならないこと
補聴器の装用により言語の習得等一定の効果が期待できると医師に診断された者であること

この他にも、補聴器の助成制度を行っている自治体があります。補聴器購入前に一度お住まいの自治体へ、お問合せされるのがおすすめです。


最後は直接的な補助や助成金制度ではありませんが、補聴器の医療費控除についての説明です。医療費控除を申請すると、結果として補聴器代金の負担が減ることがあります。次でご紹介します。

医療費控除を行う

医療費控除とは


医療費控除は補聴器購入の直接的な補助や、助成制度ではありません。一定額以上の医療費を支払った場合において、治めた税金の一部が返ってくる制度です。

2018年より補聴器は医療費控除の対象となりました。そのため補聴器代を医療費として確定申告すると、所得税の還付が受けられたり、住民税が安くなります。結果として、補聴器費用の負担を減らすことに繋がるのです。

医療費控除は基本的に、1月1日から12月31日まで、自分と生活費が一緒である家族の医療費が、※10万円を越えた場合、超えた部分が医療費控除の対象となります。(※その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額)

ただこの医療費控除も全ての人が対象となるわけではありません。「医師等による診療や治療を受けるために直接必要」な人が対象です。診断や治療の際に、補聴器がなくても受診ができる人は医療費控除の対象にはなりませんので注意が必要です。

次は医療費控除の流れについて説明します。

医療費控除申請の流れ

医療費控除の流れは、次の通りです。

①補聴器相談医のいる耳鼻科に「診療情報提供書」を記入してもらう
②補聴器店で補聴器を購入して、領収書と診療情報提供書控えをもらう
③領収書と診療情報提供書控えを合せて確定申告する

上記が医療費控除申請の流れでした。医療費控除の詳細につきましては、こちらを参考にして頂けると幸いです。

補聴器の医療費控除を受けるには?

ここまでで、補聴器購入の補助、助成制度についてご説明させて頂きました。

補聴器の補助や助成金制度はさまざまです。自治体独自の取り組みもありますので、まずは購入前にお住まいの自治体にお問合せ頂くことをおすすめします。

当記事があなたの、補聴器購入の参考となれば幸いです。

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