有毛細胞は蝸牛内に生えていて、音を電気信号に変え脳に伝える役割があります。つまり有毛細胞が減少すると脳に伝える音の情報も減り聞こえが悪くなるということです。では、有毛細胞は再生することはできないのでしょうか?
有毛細胞を再生する方法について
有毛細胞は一度死んでしまうと再生はしません。ただ、将来的に有毛細胞を再生させる医療が登場する可能性は高いです! 京都大学の山中教授らによって作成されたiPS細胞の研究が内耳にも応用され始めたためです。
慶応義塾大学医学部耳鼻咽喉化学教室と生理学教室の共同研究チームにより蝸牛のほとんどすべての種類の細胞が作成されています。これらの研究結果が今後難聴の治療に応用されることが期待されます。
これ以上、細胞を減少させないために
とはいえ、再生医療が難聴の治療に応用されるのはまだ先の話。いま私たちができることは、いまある有毛細胞をこれ以上減らせないようにすることです。普段わたしたちが改善できるところでは、大きな音を聞かない(音響外傷)、生活習慣を整えるなどがあります。
音響外傷
音響外傷とは大きな音で有毛細胞が傷つき発症する難聴です。クラブやパチンコ店内などの密閉された場所で大きな音を聞くことで発症します。音響外傷から有毛細胞を守るためには、大きな音がする場所では耳栓などを装着し耳を保護することが大切です。
また、最近街中でよく見かけるイヤホンの装着にも注意が必要です。耳を密閉して音を聞くと音圧で聴覚器を傷つけるためです。イヤホンをするときは、音量を上げ過ぎないように注意し定期的に外して耳を休ませましょう。
生活習慣
生活習慣を整えることで有毛細胞の減少を防ぎます。具体的には、たばこをやめる、程度な運動をする、暴飲暴食を避けるなどが挙げられます。生活習慣を整えることは活性酸素を増やさないための行動です。活性酸素とは、物質を酸化させる酸素です。
活性酸素はウイルスや菌を撃退する役割がありますが、増えすぎると正常な細胞も酸化し老化させます。有毛細胞も老化するので、活性酸素を増やさない生活にすることが大切です。
損傷した有毛細胞が元気にする方法はある
死んでしまった有毛細胞を再生することはできませんが、損傷した有毛細胞を元気にする方法はあります。TSC (thresholds sound conditioning)というトレーニング方法です。TSCはサウンドコンディショニングとも言います。
TSCは聞こえるか聞こえないかという小さな音を入れて有毛細胞を刺激し回復させる方法です。 海外ではサウンドコンディショニング用の機械があり、毎日30分間、2週間ほど聴取すると10〜50dBほど聴力が回復したといったデータがあります。
サウンドコンディションに使用する音は、低音域から高音域に変化があるものが望ましいです。 身近な音では、小鳥のさえずり音やクラシック音楽などがおすすめです。最近ではスマホのアプリでモスキート音などが聞けますのでアプリを利用してトレーニングするのも良いかもしれません。
まとめ
以上、有毛細胞の再生や回復の仕方についてご説明しました。現代の医療では、有毛細胞を再生することができません。いまある有毛細胞を保つことが大切です。また、当記事を執筆するのにあたり下記の本・サイト様を参考にさせて頂きました。ありがとうございます。
・あぶない!きこえの悪さがボケのはじまり 著者:坂田英明
・耳鼻咽喉科の名医と“きこえ”のプロが教える耳が遠くなった?と思ったら読む本 著者:市村 順子
・こちら難聴・耳鳴り外来です!https://masafuminakagawa.hatenablog.com/?page=1449791003
※敬称略