補聴器機能付きワイヤレスイヤホンをご存知ですか?
いつもの音楽や動画鑑賞に加えて、補聴器の機能を使用することができるイヤホンです。
実は、ワイヤレスイヤホンの中には、周辺と一緒に音楽を聴くこともできる器種もあります。音楽を聴くのと同時に周囲の音も聞けるので、ふいの呼びかけに答えることができるのです。聞こえが悪い方だけでなく、健聴の方にも便利に使って頂ける機能ですよ。
ただ、補聴器の代わりにワイヤレスイヤホンを購入するには注意が必要。なぜなら、補聴器とワイヤレスイヤホンには聴力改善に関する3つの違いがあるためです。この3つの違いをきちんと把握しておかないまま、購入に進むと音の出力が足りない、充電が途中で切れるなんてことも…。
今回、補聴器店のアドバイザーである私が、ワイヤレスイヤホンについて機能、種類、補聴器との違い、おすすめする方など網羅的に紹介します。ワイヤレスイヤホンについて把握すると、自分にあった方法で聞こえを改善することができますよ。
最初に、改めてワイヤレスイヤホンについてご紹介します。
<目次>
補聴器機能付きワイヤレスイヤホンって?
※聞こえの改善を目的に購入される場合、必ず耳鼻咽喉科の受診をお願いします。
補聴器機能付きワイヤレスイヤホンとは
ワイヤレスイヤホンは、bluetoothなどの無線通信を用いて、音楽プレイヤーやスマホなどに繋がること音響器械です。ワイヤレスイヤホンを使用すると、コードに邪魔されず音楽などを楽しむことができます。
今回、ここでご説明させて頂く補聴器機能付きワイヤレスイヤホンは、従来のワイヤレスイヤホンの機能に補聴器機能を搭載したタイプ。例えば、音楽を聴きたい時は、音楽モード。周辺の音を聞きたい時は、補聴器モードと1つの器械で2つの機能を使用することができるのです。その時の、周囲の状況や気分に合わせて、簡単に変更することができますよ。
この補聴器付きワイヤレスイヤホンは、いくつかのメーカーから販売されています。ワイヤレスと言っても、耳あな型や首かけ型(ヘッドホン)、骨伝導タイプまでメーカーによって様々。
次で、いくつかの商品を例に挙げてご紹介します。
補聴器機能付きワイヤレスイヤホンの種類
補聴器付きワイヤレスイヤホンを、次の商品からご説明します。
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メーカー | 両耳価格 | 形状 | 補聴器機能 |
N社 | 約4万円 | 耳あな型 | 日本語対応 周辺の音と音楽を同時に聞ける ジム、街中、家など6つのプログラム機能 音楽機能は約16時間、補補聴器機能は36時間。 (※連続使用時は、音楽機能約4時間、補聴器機能8時間) |
B社(アメリカ) | 約9万円 | 首かけ型 | ノイズキャンセリング機能 指向性機能 テレビ、会話、飛行機などのプログラム機能 FDAの認可(米国食品医薬品局認可) |
B社(日本) | 約11万円 | 骨伝導 首かけ型 | スマホとのペアリングで装着したまま電話がとれる 指向性機能 音楽機能約10時間、補聴器機能約11時間 |
次で、上から順に詳しくご説明します。
N社
N社のワイヤレスイヤホンは、音楽を聴きながら周辺の音を聞けることが特徴です。
「会社で音楽を聴きたいけど、呼びかけられた時に困る」
「電車のアナウンスを聞き逃したくない」
上記のような場面で活躍します。この機能は、聞こえが悪い方だけでなく健聴の方にも非常に便利。
補聴器機能の特徴としては「雑音の抑制」「6つのプログラム」が挙げられます。雑音の抑制は、レストランなどの騒がしい環境でも、相手の声を効果的に集める機能です。周囲の雑音に惑わされることなく、会話を楽しめます。
6つのプログラムは、ジムや街中、家など環境に合わせて手動で音を選択できる機能。補聴器の音が物足りない場合、あなたの好みの音に変更することが可能ですよ。
このようなプログラム操作は、N社のアプリを通じて行うことができます。このワイヤレスイヤホンは、アプリペアリングサポートを搭載しているので、アプリのナビ通りにすれば、イヤホンとスマホのペアリングは簡単です。
また、こちらの商品は※音楽モードは16時間、補聴器モードで32時間の使用ができます。(※連続使用の場合、音楽モード4時間、補聴器モード8時間。)
B社(アメリカ)
世界的に有名な音響メーカーが販売した、ワイヤレスイヤホン。この、ワイヤレスイヤホンが凄いところは、FDAの認可を受けていることです。
FDAは、日本の厚生労働省にあたる公的機関で、アメリカ食品医薬品局のことです。アメリカの連邦食品・医薬品・化粧品法を基に、医薬品規制や食の安全を守る機関となります。FDAの審査基準は大変厳しいことで有名。FDAの認可がある商品は、世界的に「安全性を保障されている」と考えられるほどです。
補聴器の性能としては、二つのマイクを搭載することで実現した指向性機能。テレビや、会話、飛行機モードなどのプログラム機能が挙げられます。アプリをダウンロードすることで、周辺の環境や自分の好みに音に調整することが可能です。
数少ないFDAの認可を受けたワイヤレスイヤホンですが、まだ日本に上陸していません。そのため、インターネットの通信販売で購入することはできますが、説明書やアプリは英語表記のため注意が必要です。
B社(日本)
B社のワイヤレスイヤホンは、骨伝導で音を伝えます。骨伝導のメリットは次の通りです。
・交通事故などの危険性を未然に防ぐ
・耳に解放感がある
・本来の音も一緒に聞けるので、音が自然
・音漏れがしない
・イヤホン難聴の発症を軽減することができる
音楽と一緒に車などの音を聞けるので、交通事故など危険性をできる限り回避することができます。
また、骨を揺らして音を聞くので、周囲がうるさい環境でも、あまり音量を上げず聞くことが可能。大きな音で耳が傷つかないので、イヤホン難聴の発症を軽減することができるのです。
B社のワイヤレスイヤホンは、2つのマイクを左右に内蔵することで、音の方向感を得る指向性機能を搭載。左右どちらからの呼びかけで、間違えることなく適切に応えることができます。
しかし、骨伝導で音を伝えるので一部の難聴の方(感音性難聴・混合性難聴など)には効果がないことがあります。自分に効果があるかきちんと確認した上で、購入に進まれることをおすすめします。
以上、ワイヤレスイヤホンの種類についてご紹介しました。多くのワイヤレスイヤホンが、音量調節やプログラム変更などの補聴器の基本的機能を搭載しています。
しかし、補聴器機能が搭載しているからと言って聞こえ改善目的にワイヤレスイヤホンの購入に進むのは注意が必要。なぜなら、聞こえ改善目的なら、ワイヤレスイヤホンは出力が足りず、音がきこえにくいこともあるためです。
そのため、補聴器とワイヤレスイヤホンの違いを、きちんと把握しておくことが大切になります。
次で、補聴器とワイヤレスイヤホンの違いについてご説明します。
ワイヤレスイヤホンと補聴器の違い
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補聴器 | ワイヤレスイヤホン | |
区分 | 医療機器 | 音響機器 |
対象者 | 難聴者 | 健聴者(もしくは軽度難聴) |
価格 | 約3万円から約65万円 | 約4万円から約11万円 |
大きさ | 小型 | やや大きい |
機能 | 補聴器機能 | 補聴器機能+音楽機能 |
調整 | 必要 | 不要 |
ワイヤレスイヤホンと補聴器の3つの違い
上記の表の中で、補聴器機能に焦点を絞り違いをご説明します。
・管理医療機器であるか
・音の調整・充電機能
・定期的な調整や点検
上から順に、次でご説明です。
管理医療機器であるか
管理医療機器は国から、製品の品質や有効性、安全性を認められた製品。人体に影響を及ぼす恐れがある医療機器は、国が委託した機関によって安全性と性能をチェックされます。
補聴器の場合は、必要以上に大きな音で耳を傷つけないようにする出力制限などの項目が設けられているのです。そのため、きちんと補聴器を選んで調整を受ければ、多くの方が※聴力の改善を見込めます。
※補聴器が有用な難聴に限る
一方ワイヤレスイヤホンは、音楽などの鑑賞を目的に製造されています。そのため、補聴器機能に関しての有用性や安全性に関しての効果は保証されていません。
以上のことから、聞こえ改善を目的に使用されるのであれば、国から安全性と有用性を保証された補聴器をおすすめします。
音の調整・充電機能
しかし補聴器は、聞こえの悪い方の使用を前提にした医療機器です。そのため、※聞こえに関する機能はワイヤレスイヤホンより充実しています。先ほどのプログラムや音量などの調整は、補聴器が周囲の環境を判断して自動で変化します。
そのため、日帰り旅行やなどの少し長い外出をした時に、充電が途中で切れしてしまうことがあります。中には、ケースに蓄電できるタイプもありますが、ケースで充電している間は使用することができません。
その点補聴器は、空気亜鉛電池で稼働します。空気亜鉛電池は、種類によっても違いますが約3日から3週間ほど使用することができます。
また、最近では充電式補聴器も販売されています。一般的な充電式補聴器は、約20時間稼働。このように、補聴器の多くが1日中使用できるような設計になっているのです。
軽度難聴の方が音楽をメインに、補聴器を会議などで使用したい、このような場合はワイヤレスイヤホンをおすすめします。しかし、基本的に聞こえ改善を目的に使用される場合は、一日の大半を使用ができ、聞こえに関する機能が充実した補聴器がおすすめです。
そして、最近では補聴器側の性能も向上し、補聴器でもスマホと連携し音楽を聴くこともできますよ。≫補聴器の最新機能についてはこちら「補聴器の最新技術」をご参照頂ければ幸いです。
※紹介した機能は器種によっては対応していないこともあります。
定期的な調整や点検
しかし、補聴器は購入前には基本的にスタッフによる問診と聴力測定、調整が行われます。また、購入後も定期的に調整を行う必要があります。なぜなら、聞こえ改善には調整が非常に重要なためです。
基本的に、人によって聞こえない種類は違います。音が小さくて聞こえないのか、高音域が聞こえにくいのか人によって違うのです。小さい音が聞こえにくい方は、音を増幅すれば聞こえるようになります。高音域が聞こえ方に、音を増幅しても聞こえるようになるわけでなありません。聞こえる音域まで下げる処置が必要なのです。
このように、聞こえ改善にはその人に合わせた調整が必要となります。ひとりひとりの聞こえに合わせた調整することで、使用者は雑音の少ない聞こえやすい音を聞くことができるのです。
また、人の聴力は時間とともに変化します。そのため定期的に補聴器店に通う必要が。点検も含めて、2ヶ月に1度補聴器店に行くことをおすすめします。
ワイヤレスイヤホンは、基本的に自分でアプリを用いて調整することになります。また、音楽機能も搭載しているため、基本的に補聴器ほどの高度な音の調整機能を搭載することはできません。
上記でも申し上げましたが、メーカーも公言している通り、現在のワイヤレスイヤホンは健聴者もしくは軽度難聴の方に向けて販売しています。
以上、補聴器とワイヤレスイヤホンの違いでした。
上記のポイントを抑えた、ワイヤレスイヤホンと補聴器をおすすめする人は、次の通りです。
おすすめする人、しない人
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おすすめする人 | おすすめしない人 | |
補聴器 | 高度・重度難聴の方 主な使用目的が補聴器の方 煩わしい操作が苦手な方 |
聞こえに困っていない方 継続的な調整や点検などが面倒な方 安い器種が欲しい方 |
ワイヤレスイヤホン | スマホなどの機械が得意な方 健聴もしくは軽度難聴の方 音楽を主に楽しみたい方 |
機械の設定が不得意の方 軽度・高度難聴の方 聞こえ改善をメインに使用される方 |
健聴の方でも、レストランなどの騒がしい場所でも、周囲の雑音に邪魔されず相手の声を的確に拾うので便利に使って頂けます。
しかし、聞こえを改善に主に使用されるのであれば、補聴器がおすすめです。補聴器の性能も向上し、音質も良く、操作を必要としません。外出先でも補聴器の存在を忘れて、活動することができますよ。
また、ワイヤレスイヤホンを購入する場合、ご自身のスマホが対応器種か確認した上で購入に進みましょう。
まとめ
以上、ワイヤレスイヤホンについてご説明させて頂きました。
補聴器機能付きワイヤレスイヤホンは、音楽や動画と一緒に補聴器機能が搭載しています。健聴の方でも、非常に便利に使えるのですね。ただ、きこえのお助け隊は、聴力補助を目的として購入する場合は補聴器をおすすめしております。
聴力補助には、あなたの聴力程度に合わせた調整ができる補聴器が非常に有用のためです。上記のポイントを抑えて、あなたに合った器種を選びましょう。
当記事があなたの参考になれば幸いです。