「補聴器の値段はどのくらいなの?」
今回、補聴器店のアドバイザーである私が補聴器が高い理由、平均購入価格や相場、種類や性能、補聴器購入に関する補助金や助成金について、補聴器とお金に関することを網羅的にご説明します。
2024年2月13日更新
なぜ補聴器は高いの?
補聴器が60万円もすると聞いて驚いた方も多いのではないでしょうか?
補聴器が高い理由は「医療機器」「調整と技術料」「部品と性能」の3つに分けて説明できます。
まず、補聴器は国によって安全性と有効性が認められた医療機器です。この認可を得るためには、開発費や安全性の検証に多くのコストがかかります。これが補聴器の価格を押し上げる一因となっています。
次に、補聴器は使用者の聴力に基づいて精密に調整されます。この調整には専門的な技術と人件費が必要で、これらのコストが補聴器の価格に反映されています。調整された補聴器は、使用者が聞こえにくい音を増幅するなど、聞きやすくするための処理が可能です。
最後に、補聴器は耳にかけて常時使用するため、使用される部品は小さくて耐久性が必要です。高品質な部品を使用することで製造コストが上がり、それが補聴器の価格に影響します。さらに、補聴器内に搭載されているコンピューターの処理能力が高いほど価格も高くなります。
形状/種類別の補聴器の値段
補聴器の値段は約3万円から約60万円と器種によって様々です。また、補聴器の形状によって、値段が違うのはご存知でしたか?
補聴器の形状別の値段は、次の通りです。
補聴器の種類 | 対応難聴程度(聴力) | 値段 |
耳かけ型補聴器 | 軽度難聴から重度難聴 | 約4万円から約60万円 |
耳あな型補聴器 | 軽度難聴から重度難聴 | 約5万円から約55万円 |
ポケット形補聴器 | 中等度難聴から高度難聴 | 約3万円から約13万円 |
眼鏡型補聴器 | 軽度難聴から中等度難聴 | 約18万円から約24万円 |
次で上から順にご説明します。
耳かけ型
耳かけ型補聴器は本体を耳にかけて使用します。特徴としては本体にスペースがあるので高度な機能性を搭載できることです。各メーカーともに最も高性能な補聴器として販売されているのがこの耳かけ型です。値段が高いものだと片耳60万円ほどしますが、安い器種だと3万円ほどで購入できます。日本国内の流通数が最も多く耳かけ型は補聴器のセオリーな種類です。
耳あな型
耳あな型は名前の通り耳の穴に装着する補聴器です。耳穴に装着するので補聴器が目立ちにくく、マスクやメガネの邪魔になりません。ただ耳穴型は小さくなるほど高度な機能を搭載できず、同じ値段の耳かけ型と比べて機能面が劣ることがあるので注意が必要です。また、多くの耳穴型は耳穴を採取して作成されるため落脱やハウリングがしにくいですがオーダーメイドなので耳かけ型より高価になる傾向にあります。
ポケット型
ポケット型補聴器は、本体を胸のポケットもしくは首から吊り下げて使用します。本体に音量スイッチや操作ボタンが付いているので手元で簡単に操作ができます。他の種類に比べて値段が安く操作しやすい補聴器ですが、持ち運びの際はコードが邪魔になる衣ずれの音を拾うなどのデメリットもあります。静かな環境でのテレビ試聴や家族の会話に使用するには十分利用できます。
眼鏡型
メガネ型補聴器はメガネと補聴器が一体になったタイプです。メガネのつるに補聴器が内蔵しており、直接頭がい骨を振動させることで音を聞きます。このように振動で音を伝える補聴器を骨伝導型と言い、内耳に直接音を伝えることができるので伝音性難聴の方に非常に有効です。
しかし、一部の難聴に重宝されるメガネ型ですが、補聴器のメインユーザーである高齢者の加齢性難聴にはあまり効果的ではありません。ご希望の方は購入前に耳鼻咽喉科でご相談ください。
補聴器の相場/平均購入価格
2022年日本補聴器工業会の調査によると、補聴器1台当たりの平均購入金額は約10万円~30万円でした。一般的に20万円前後の補聴器がよく購入されているという結果に。ただ、相場は20万円と言われても、安い/高い補聴器と比べて具体的に何が違うかよくわからない、このようにお思われた方も多いのではないでしょうか?
今まで補聴器に関心がないと、値段の違いで何が変わるかなんてわからないですよね。実は、補聴器の値段の違いは、機能の差ということはご存知でしたか?
次で補聴器の値段の違いについて、一歩踏み込んでご説明します。
高い補聴器ほど性能良い
補聴器の金額差は機能の違いです。当然、高性能の補聴器ほど、高い値段で販売されています。
1991年に世界発のデジタル補聴器が発売されて以来、補聴器の機能は飛躍的に向上。向上した結果、高度な音の処理が行える、デジタル式補聴器が主流になりました。
デジタル技術により、メーカー独自の音の調整機能を搭載した補聴器が誕生。最近では、流通しているほとんどの補聴器がデジタル式です。
高度な音の処理機能とは、一般的に次の4つとなります。
・チャンネル/バンド数(音質)
・音の分析
・指向性
・ワイヤレス機能
上記の機能が、高度で充実している器種ほど、高性能で高価格です。
次で上から順にご説明します。
チャンネル/バンド数(音質)
チャンネル/バンド数は、音の分割数のことです。聞こえてきた音を、補聴器は周波数ごとに分割します。分割した音は、ひとつひとつ確認し、雑音があれば抑制を行い、必要な音は強調。処理された音は、再び一つの音に戻し、使用者に届けます。基本的にチャンネル数/バンド数が大きいと滑らかで聞こえの良い音を聞くことが可能です。
音の分析
聞こえてきた音が、雑音や会話音、音楽などの必要な音か、雑音か判断を行います。会話音などの必要な音は強調し、雑音は抑制。音の分析機能で、使用者は必要な音が聞き取りやすいです。
指向性
複数のマイクを使い、音の方向を判断します。複数のマイクを使うことで、音の時間差を判断することが可能。時間差で音を判断することにより、特定の方向の音を認識し強調することができます。例えば。正面の会話相手の声を強調し、後方の車の音などの雑音を抑制することができるのです。
ワイヤレス機能
無線(ワイヤレス)を使って、補聴器と外部機器を連携する機能です。例えば、電話と連携することで、周辺の音に邪魔されず、相手の声だけを直接聞くことができます。最近では、電話だけでなく、スマートフォンやテレビと連携する器種もあります。
デジタル化に伴い、上記の機能が向上しました。最近の補聴器の中には、難聴者の補助装具という枠を越え、音質や機能性を高めたお洒落で、趣向性の強い器種も多く販売されています。
あなたにあった補聴器の選び方
予算内かつ生活にあった器種を選ぶ
おすすめの補聴器の選び方は、あなたの生活に合った器種を選ぶことです。
下記を参考に、あなたの生活に合った補聴器を選びましょう。
値段 | 補聴器の性能 | おすすめする人 |
10万円前後 | シンプルな機能 | あまり騒がしい場所に頻繁に行かない人 会議など補聴器を使用する場面が決まっている人 |
20万円前後 | 一般的な機能を標準装備 | 初めて補聴器を使用する人 日中の大半を補聴器で過ごすことを考えている人 |
30万円以上 | 高度な音の調整機能を搭載 | 補聴器の高性能な機能が必要とする人 アクティブに日常を過ごす人、煩わしい補聴器の操作が嫌な人 |
基本的に相場である20万円の補聴器が、標準的な機能となります。そのため、相場の機能を基準にすると、補聴器選びがスムーズですよ。
20万円の補聴器の機能は、次の通りです。
20万円前後の補聴器の性能
・ハウリング抑制機能搭載
・周囲の音に合わせて音量を自動調整機能
・指向性がやや搭載されている
・補聴器によっては外部との連携がとれる
20万円前後の補聴器はスタンダードな機能をベースに、最新の調整機能が少し付加されたタイプ。スタンダードなタイプですので初めて補聴器を使用される方には、この価格帯からお選び頂くのをおすすめします。
しかし、なるべく早く補聴器に慣れたい方は、高性能の補聴器がおすすめ。なぜなら、高性能の補聴器は使い初めに聞こえる生活音や雑音を軽減できるため。
補聴器の装着初めは、今まで聞こえてこなかった様々な生活音が雑音として耳に届き、音を煩わしく感じます。使用し続けると慣れて、何も感じなくなるのですが、高性能の補聴器であれば雑音が軽減された状態で使い始めることができるのです。初めから補聴器をできるだけ快適に使用されたい方であれば、高性能の補聴器がおすすめです。
補聴器購入に関する保険や補助金
補聴器は健康保険の※適応外です。そのため病院で補聴器を販売することは基本的にありません。口頭で購入を勧められるか病院が提携しているお店があれば紹介してくれます。
保健には適応されませんが、補聴器の購入に関しては公的補助金制度があります。一般的に補聴器の公的補助金制度は「障害者総合支援法」と「自治体独自の支援制度」の二つです。
障害者総合支援法は、障害者手帳を取得したのち、補装具費支給制度で補聴器を購入する方法です。手帳の等級や補聴器の種類によって支給上限は違いますが約3万円から14万円の補聴器を1割負担で購入できます。
自治体独自の支援制度は、各市区町村が行っている補聴器補助金の支援制度です。主に障害者総合支援法に該当しない方が対象で、補助額は自治体によって異なりますが3万円前後、場合によっては現物支給となります。
ただし、どちらも公的な制度であることからいくつか条件があります。詳細は各市区町村の福祉課にお問い合わせ頂ければ幸いです。
※人工内耳は適応
以上、補聴器の値段についてご説明してきました。しかし、実際に使用してみないと、補聴器の性能なんてわからないもの…。できることなら、事前に効果を確認してから購入に進みたいですよね。
そこで、おすすめするのが補聴器のレンタルサービスです。次でレンタルサービスのメリットについてご説明します。
レンタルサービスを利用して購入に進もう!
補聴器のレンタルサービスのメリットは次の2つです。
・実際に使用する環境で試せる
・装着などの取り扱いを確認できる
次で上から順にご説明します。
実際に使用する環境で試せる
あなたの生活環境で効果を確認することができます。店頭で試聴した際、外と比べて静かなため、雑音に邪魔されず聞こえの良い音を聞くことができます。しかし、実際使用する場面は、買い物や会合、仕事など、雑音が多い環境で使用することが多いのではないでしょうか。
上記でもご説明しましたが、器種によっては雑音の抑制できる範囲やレベルは違います。そのため、実際に生活する環境で試してみるのがとても重要。あなたの生活に、希望している補聴器の効果がきちんと発揮できるのか、実際に試してみてから購入に進みましょう。
装着などの取り扱いを確認できる
補聴器は、耳という確認しにくい場所での装着を求められます。また、電池交換なども必要な商品。そのため、補聴器の取り扱いが自分にとって負担ではないかレンタル期間中に確認しておくことが重要です。電池交換が負担になるようであれば、充電式補聴器を選ぶなど対処することができますよ。
以上レンタルサービスのメリットでした。お店によって異なりますが、レンタルサービスは1週間~1ヶ月ほどレンタルできるところが一般的です。金額は無料でレンタルできる所もあれば、4000円ほど費用がかかる所もございます。
補聴器は暮らしを共にするパートナーのような存在です。レンタルサービスを利用して、パートナーの性能を購入前にきちんと把握しておきましょう。
また、弊社のきこえのお助け隊でも、補聴器のレンタルサービスを行っております。弊社のレンタルサービスは、2週間無料レンタル可能!補聴器累計販売台数10万台の実績と経験から、あなたにぴったりの1台をお探しします。
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