補聴器がうるさい理由は鈴虫が教えてくれた

あれまつむしがないている チンチロチンチロ チンチロリン
あれすずむしもなきだして リンリンリンリン リインリン

これは「虫のこえ」という童謡です。日本人であれば誰もが聞いたことがあるのではないでしょうか?

まつむしはチンチロ、鈴虫はリンリン。セミだとミンミンでしょうか。 このように日本では風情や情緒の表現に使用される虫の声ですが、実は外国の方には聞こえていません。時にはうるさくすら感じる虫の声が外国人には聞こえていないのです。

この記事を書いた人
山田 元一(やまだ もとかず きこえのお助け隊
「最近聞こえが悪くなった…」このような悩みをお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。しかし、聞こえについて相談できる人や、機会はそう多くないのが現状。これまで補聴器の相談を100件以上承ってきた私が、補聴器や聞こえ全般に関する情報を余すことなくお伝えいたします。

<目次>

  1. 外国人は虫の声が聞こえていない?
    1. 虫の音が聞こえない原因
  2. 脳は必要な音を選択している
    1. 補聴器がうるさいと感じるのも脳の問題
  3. 最後に~日本人が虫の声が聞こえる理由~

外国人は虫の声が聞こえていない?

外国人と日本人の聞こえの違いに気が付いたのは、東京医科歯科大学の角田教授です。1987年にキューバのバハナで行われた国際学会での出来事。

学会時に角田教授は会場周辺に激しく聞こえる虫の音に気が付きました。そこで周囲の人に何の虫か尋ねたところ誰も何も聞こえていないと言うのです。

何度聞いても同じ返事で、あまつさえ「お疲れでしょうからゆっくりとお休みください」と教授は言われてしまいます。

虫の音が聞こえない原因

後に原因が角田教授の実験で明らかになりました。教授は、左右に同時に音を流し、どちらの耳がより聞き取れるかという実験を行いました。その結果、音楽を流した場合は左耳の聞き取りが良く、語を流した場合は右耳の聞こえが良かったのです。

つまり、右脳は音楽や機械音、雑音の聞き取りに優れ、左耳は人間の話す声の理解や論理的な処理の聞き取りが優れているということです。この研究によって、私たち日本人は虫の声を右脳で聞いていると言うことがわかってきました。外国人と日本人の違いは、虫の声を音と認識するか、声と認識するかの違いだったのです。

実際に、教授と1週間同行したキューバ人の男性は3日目で虫の声を聞き取ることができました。 このように私たちは無意識で聞きたい音を選んでいるのです。そして、このような音の選択は日常的に行われています。カクテルパーティー効果はご存知でしょうか?

脳は必要な音を選択している

カクテルパーティー効果とは、自分が必要としている情報を無意識に選択できる脳の働きのことです。パーティーのような騒がしい状況でも自分に必要な声はしっかりと聞き取れることからカクテルパーティー効果と名付けられました。

例えば、本を読みながらテレビをつけていても、本に集中しているとテレビの音は気にならないですよね。これもカクテルパーティー効果です。脳がテレビの音をシャットダウンしているのです。脳が音を選択している理由は、大量の情報を処理できないため。

心身的には、ストレスやイライラ、不眠などといった症状で現れます。心身に負担をかけないための防御機能なのです。しかし、このカクテルパーティー効果による音の選択機能が弱まることがあります。それが難聴です。

補聴器がうるさいと感じるのも脳の問題

難聴になるとカクテルパーティー効果による音の選択機能が弱まります。長年の難聴によって無視して良い音の情報を忘れているためです。定期的に音を聞くことで必要・不要といった情報は維持されるのですが、音が入らないと古い記憶から忘れていきます。

そのため、補聴器をつけると健聴時には無視していた音も聞こえるのでうるさいと感じます。音も勉強と一緒で、定期的に復習する必要があるのです。反対に言えば、補聴器をつけて音を聞くことで新たに音の情報を蓄積できるということでもあります。

脳が必要な音と不要な音を再学習すれば補聴器を付けていても自然と雑音を聞き流せるようになるのです。補聴器の音に慣れるまで個人差がありますが、早い人で1週間ほど、遅い人は半年ほどです。

難聴期間が長いほど補聴器の音に慣れるまで時間がかかり、補聴器の装着時間が長いほど早く慣れる傾向にあります。

最後に~日本人が虫の声が聞こえる理由~

ここまで、聞こえとは脳の関係をご説明させて頂きました。補聴器がうるさい理由は、脳が音の情報を忘れているためだったのです。さて、最後に話は虫の声に戻ります。なぜ日本人は虫の声を聞けるのでしょうか?

それは、古来より虫の声に耳を澄ましてきた日本独自の文化にあります。冒頭で紹介した虫の声は明治時代の童謡ですが、さらに古い万葉集にも虫について詠まれています。いくつかありますが、今回は一句だけ。

夕月夜心もしのに白露の置くこの庭にこほろぎ鳴くも
意味:夕月が照る夜に、心もしなえるほどに白露がおりているこの庭に、こおろぎが鳴いています。

このように、日本人にとって虫の音は四季の訪れを告げる大切な声だったのです。

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