補聴器のデジタルとアナログの違い

1990年頃から補聴器のデジタル化が進み、2022年の現在では販売されている約9割以上がデジタル補聴器です。アナログ補聴器とデジタル補聴器の違いは音の処理方法になります。音の分析や処理ができるデジタル補聴器はアナログ補聴器よりも聞こえが良いです。

しかしながら、アナログ補聴器もアナログならではのメリットがあるのも事実です。今回アナログ補聴器とデジタル補聴器について、アナログ・デジタルデータとは、補聴器の仕組み、技術、メリット・デメリット、値段といったことを網羅的にご紹介します。

最初にアナログとは、デジタルとは何かについてご説明します。

この記事を書いた人
山田 元一(やまだ もとかず きこえのお助け隊
「最近聞こえが悪くなった…」このような悩みをお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。しかし、聞こえについて相談できる人や、機会はそう多くないのが現状。これまで補聴器の相談を100件以上承ってきた私が、補聴器や聞こえ全般に関する情報を余すことなくお伝えいたします。

<目次>

  1. アナログデータとデジタルデータ
  2. アナログ補聴器とデジタル補聴器
  3. アナログ補聴器の問題点
  4. デジタル化によって実現した技術
  5. 値段もアナログ・デジタルともに同価格
  6. アナログ補聴器のメリット
  7. まとめ

アナログデータとデジタルデータ

アナログ 数値を、長さ回転角、電流など連続的に変化する別の量で表すこと
デジタル 連続するものを区切って、数字や記号で表すこと

連続的や断続的といった聞きなじみのない言葉は時計を想像して頂くとわかりやすいので、アナログ時計から順を追ってご説明します。

アナログ時計

アナログ時計 秒針で時刻を判断する時計はアナログ式です。12時24分から12時25分になる時、アナログ時計は12時24分35秒、12時24分36秒、12時24分37秒と、止まることなく針が移動します。

時間の情報を伝える針が止まらない、つまりデータが連続しているといえます。

さらに言えばアナログ時計は秒より下のミリ秒もなんとなく知ることができ、秒から秒のスピード感といった曖昧な情報も伝えることができます。

デジタル時計

デジタル時計 ディスプレイの数字で時刻を判断する時計はデジタル式です。例えば、何時何分(00:00)まで表示されるデジタル時計は、12時24分から12時25分になる60秒間は数字が変化しません。1分を一つの情報として区切って段階的に表示しているためです。

12時24分から12時25分の間に存在する、12時24分25秒だとか12時24分26秒といった時刻を知ることはできませんが、見る人によって時間のばらつきがなく情報が正確です。

アナログのメリット・デメリット

アナログはデジタルに比べて細かいニュアンスを伝えることができますが、12時24分30秒を「12時25分」と捉えるのか「12時24分」とするのか見る人によって違うので情報が曖昧です。アナログは再現性(保存性)が低いですが、多くの情報を伝えることができます。

デジタルのメリット・デメリット

デジタルはアナログと比べて情報が正確ですが細かいニュアンスを伝えることができません。しかし、曖昧な情報がないので、段階的データは数字や記号に置き換えることができ0と1でしか判断できないコンピューターと相性が良いです。デジタルは曖昧な情報は削除されているので、正確で再現性や保存性が高いです。

ここで注意してほしいのが、デジタルやアナログといった言葉はあくまでデータの処理方法ということです。機械=デジタルという訳ではありません。

ソロバンがデジタルであることが良い例で、ソロバンはそれぞれの珠の位置で数字を表しますが、一列(位)の間に1.5や1.8などの少数は存在しません。ソロバンが扱う数字はデジタルのように情報が段階的に処理されています。

以上、アナログとデジタルについてご説明しました。では、補聴器におけるデジタル・アナログ処理について次の仕組みからご説明します。

アナログ補聴器とデジタル補聴器

さきほど、アナログとデジタルについてご紹介しました。では補聴器に置き換えた場合について、補聴器の仕組みからご紹介します。時計のデータは「時刻」、補聴器のデータは「音」です。

アナログ補聴器の仕組み

①マイクで集音してアナログデータに変換
②電気信号を増幅器(アンプ)で増幅
③スピーカーに出力

次で上から順にご説明します。

①マイクで集音してアナログデータに変換

横波

音とは、空気の振動によって発生する現象です。補聴器に内蔵しているマイクが空気の振動を拾い、電気信号に変換します。電気信号は次のアンプに運ばれます。このときの電気信号は音波(横波)と呼ばれる波の形で作図ができます。

②電気信号を増幅器(アンプ)で増幅

マイクから運ばれた電気信号はアンプによって増幅します。アンプは入力された電気信号を、事前に設定された増幅量に応じて大きくします。

③スピーカーに出力

アンプで増幅された電気信号は、再びスピーカーで空気の振動に戻し人の耳に聞こえる音にします。

上記の仕組みを経て、アナログ補聴器は音を増幅しているのですね。

音をアナログデータで作図したものが音波です。デジタル補聴器はこの音波をデジタルデータに変換します。

実はデジタル補聴器はアナログデータも取り扱いしているのです。では次にデジタル補聴器の仕組みついてご紹介します。

デジタル補聴器の仕組み

デジタル仕組み

①マイクで集音してアナログデータに変換
②アナログ/デジタル変換器(A/D変換)でアナログデータをデジタルデータに変換
③デジタルデータをプロセッサ(DSP)で処理
④デジタル/アナログ変換器(D/A変換)でデジタルデータをアナログデータに変換
⑤電気信号を増幅器(アンプ)で増幅
⑥スピーカーに出力

次で上から順にご説明します。

①マイクで集音してアナログデータに変換

アナログ補聴器と同様に空気の振動をマイクが集音、電気信号に変換します。変換された電気信号はアナログデータ(音波)として次のアナログ/デジタル変換器へ伝えます。

②アナログデータをデジタルデータに変換(A/D変換)

A/D変換器でアナログデータをデジタルデータに変換します。次にデータを渡すプロセッサは、デジタルデータでしかデータを扱えないためです。アナログデータを一定時間ごとに切り取りデジタルデータに変換します。

プロセッサがデジタルデータしか扱えない理由

プロセッサ(コンピューター)は0と1の2つの数字しか扱うことができないためです。0と1で数字を表すことを2進法と呼びます。これは、コンピューターが「電気が通っているかいないか」という2択でしか判断できないからです。電気が通っている状態を0、通っている状態を1として表現します。

③デジタルデータをプロセッサ(DSP)で処理

プロセッサで雑音を除去、会話音を増幅するといった音の加工処理をします。プロセッサとは、データを転送や計算、加工を行う部品です。

音の加工については、デジタル化によって実現した技術で詳しくご説明します。

また、メモリとは調整状態を保存しておく記憶装置です。プロセッサが計算した聞こえの良いデータをメモリが記憶しておき、必要なタイミングでプロセッサに渡します。

プロセッサをDSPやICチップなどと表記しているサイトもありますが、基本的には同じ意味です。

DSPはデジタルシグナルプロセッサの略でデジタル処理に特化したプロセッサのこと。ICチップとはプロセッサなどの多数の電子部品をひとつの基盤にまとめた電子部品のことです。

④デジタル/アナログ変換器(D/A変換)でデジタルデータをアナログに変換

プロセッサで加工されたデジタルデータは、次のアンプが取り扱えるようにアナログデータに戻します。

⑤アナログデータを増幅器(アンプ)で増幅

アナログデータに戻った電気信号を音が増幅します。

⑥スピーカーに出力

アンプで増幅した電気信号は、再びスピーカーによって空気の振動に戻します。空気の振動はイヤホンを通じて私たちの耳に伝わります。

上記がデジタル補聴器の仕組みです。

プロセッサを経由したいがゆえに、アナログデータをデジタルデータに変換していることがわかります。

ではなぜ、デジタル補聴器はアナログ補聴器よりも複雑な工程が必要なのでしょうか?

それは、従来のアナログ補聴器にはいくつか問題点があっためです。その問題点を解消するためにデジタル処理が必要だったのです。

アナログ補聴器の問題点

アナログの仕組み

アナログ補聴器は入ってきた音を単純に増幅します。単純に音を大きくして聞きたいのであれば問題ないのですが、常に音を聞く上でアナログ補聴器は次の問題点がありました。

・雑音も一緒に増幅される
・音量をあげるとすぐハウリングする
・小さな音をきこえるようにすると、大きな音が響きすぎる

アナログ補聴器は、入力された音が必要か否かといった点を判断できません。

基本的には全ての音を等しく増幅します。

そのため、アナログ補聴器は雑音に邪魔されて必要な音が聞こえにくいといった問題があったのです。 このような問題の解消に最適だったのが音を分析できるデジタル補聴器なのです。

デジタル化によって実現した技術

デジタルの仕組み

デジタル補聴器は音を分析処理することで、次の技術が可能になりました。このデジタル補聴器の技術によって補聴器の聞こえは飛躍しました。 ・マルチチャンネル ・ノンリニア ・雑音抑制 ・ハウリング抑制 次で上から順にご説明します。

マルチチャンネル

マルチチャンネルとは、補聴器に入力された音を周波数ごとに分割する機能です。分割数が多いほど細かく音を処理するので、雑音が細かいレベルで除去された滑らかな聞こえになります。

チャンネル“数”と呼ばれるように「8チャンネル」や「16チャンネル」と数字と一緒に記載されていることがほとんどです。基本的に数字が大きいほど高機能です。

しかし、メーカーごとに雑音処理の方法が違うので、メーカーを越えて比較はできません。

雑音抑制

マルチチャンネルで分割された音は「会話の優先」や「不快な音の低減」といった雑音を抑制する処理が行われています。

エアコンや乗り物といった音の強さが変動しないものは、会話音ではないと判断し抑制。冷蔵庫のブーンといった一定以上音の変化がないものも雑音と判断します。

このような分析処理を入力された音に施すことで、雑音に邪魔されない聞こえを提供します。

ノンリニア

ノンリニアは音を聞こえる幅に圧縮する機能です。難聴によって小さな音が聞こえにくくなりますが、そのぶん大きな音がうるさく感じなくなる訳ではありません。難聴の方も健聴者がうるさく感じる音はうるさいのです。

ノンリニア機能で、小さな音は聞こえる幅まで増幅し、大きな音はうるさく感じない音まで圧縮。使用者が快適に聞こえる大きさに補聴器の音量の幅を設定します。

ハウリング抑制

デジタル化によって、入力された音と増幅した音を判断できるので、ハウリングを抑制できます。

ハウリングの抑制方法は様々ですが、音の増幅を下げる、ハウリングと逆の音波を出しピーピー音を打ち消す(逆位相方式)、ハウリングを発生させる周波数帯域をずらして発生させない(周波数シフト式)などが挙げられます。

これらの処理を行うことで不快なハウリングを抑制します。 デジタル補聴器は聞こえやすさを追求しています。

そして、もうひとつデジタル補聴器には聞こえをさらに良くする特徴があります。

一人ひとりに合わせた調整が可能に

デジタル補聴器はひとりひとりの聞こえに合わせて音を調整することができます。使用者に合わせた調整は聞こえの改善にとても重要です。

例えば、30代・60代・90代ではそれぞれ聴力レベルが違いますよね。60代の方にはぴったりな音の大きさでも、30代の方ではうるさく聞こえて、90代の方には物足りないかもしれません。

さらに加齢性難聴は高音域の聞こえから悪くなる傾向にあるので、音の大小だけでなく高音域や低音域といった高低の調整も大切です。高音域が聞こえにくいのであれば、聞こえる音域まで音を下げると言った処理をします。

単純に音を増幅するだけでは、聞こえている低音域も大きくなるので聞こえにくいのですね。

デジタル補聴器は聴力測定のデータを基にひとりひとりの聞こえに合わせて補聴器の音を調整できるので、さらに使用者の聞こえをよくすることができます。

このようにデジタル補聴器はアナログ補聴器に比べて様々な機能を搭載できるのです。

そして、デジタル補聴器は高機能だからといってアナログ補聴器よりも高い値段でもありません。

値段もアナログ・デジタルともに同価格

値段

アナログ補聴器:約2万円~約5万円
デジタル補聴器:約3万円~約60万円

上記のように、上限は大きな違いがありますが、アナログもデジタルも下の価格帯で比較するとそこまで変わりません。デジタル補聴器は、様々な機能を搭載できるので機能数に応じて製品の値段が高くなります。

その一方でアナログ補聴器はデジタル補聴器のように高度な機能を搭載できないので値段差はありません。

デジタル補聴器が普及し始めたころは、搭載されているプロセッサが高価だったのでアナログ補聴器よりも高い金額で販売されていました。

しかし、プロセッサの普及に伴いデジタル補聴器の値段も下がり、現在はアナログ補聴器と同価格帯で販売されています。

つまり、デジタル補聴器はアナログ補聴器よりと比べて「機能が豊富」「一人ひとりの聞こえに調整が可能」なおかつ「値段もほとんど同じ」ということが判明しました。現在販売されているほとんどの器種がデジタル補聴器であることも頷けます。

では最後に冒頭に紹介した「アナログ補聴器もアナログならではのメリットがある」と言ったことに触れて本記事を締めくくりたいと思います。

アナログ補聴器のメリット

デジタル補聴器が普及した今でもアナログ補聴器が販売されているには、アナログ補聴器には次の2つのメリットがあるためです。

・アナログならではの曖昧な聞こえ
・デジタル補聴器よりも大きな音が出せる

次で上から順にご説明します。

アナログならではの曖昧な聞こえ

デジタル補聴器は曖昧な音の情報は削除されています。つまり、デジタル補聴器はアナログ補聴器と比べて単純に音が足りていません。この削除された音が、音の広がりや深みを演出しています。

CDが主流になった今でも一部の音楽好きからレコードが支持されているのも同じ理由です。アナログ音が良いのか、デジタル音が良いのかは正直に申し上げますと使用者の好みです。

補聴器販売店からすると、雑音がなく音がすっきり聞こえるデジタル補聴器がおすすめですが、CDよりレコードが好きな方にはデジタル補聴器は冷たい音に感じる可能性があります。

デジタル補聴器よりも大きな音が出せる

アナログ補聴器はデジタル補聴器と比べて大きな音を出せます。製品が出せる一番大きな音を90㏈入力最大出力音圧レベルと言います。

90㏈ SPLという大きさの音を入力すると補聴器の出力はほぼ飽和状態のなることから、一般的に90㏈で測定されます。耳を強大音から保護するという観点からピーク値の表示が決められているのです。

弊社で最も大きな音が出せる機種だと90㏈入力最大出力音圧レベルは130㏈(ポケット型だと135㏈)でした。通販のアナログ補聴器を調べてみると90㏈入力最大出力音圧レベルは149㏈。

つまり、デジタルとアナログとでは15㏈~20㏈ほど出せる音量に違いがあるということです。 一般的に90㏈以上の難聴は、重度難聴の分類。耳元での大きな会話でも理解することが難しい方です。

デジタル補聴器でもハイパワータイプご利用頂くことで重度難聴に対応できます。しかし、ハイパワータイプでも聞こえにくい方はさらに大きい音を求めてアナログ補聴器を希望されることがあります。

このようにとても大きな音を聞きたい方にアナログ補聴器は需要があります。

以上、アナログ補聴器のメリットについてご説明しました。アナログ補聴器はデジタル補聴器と比べて、「曖昧な聞こえ」と「とても大きな音」が出せることがメリット。

音にこだわりがある方やデジタル補聴器の音では聞こえにくい方がアナログ補聴器は魅力的なのです。

まとめ

最後にアナログ補聴器とデジタル補聴器について表で簡単にまとめました。

メリット デメリット
アナログ補聴器 音が豊か、ぬくもりを感じられる
大きな音が出せる
使用者に合わせた聞こえに調整できない
デジタル補聴器

雑音の除去・会話音の増幅といった音の加工ができる
ひとりひとりの聞こえにあわせた調整ができる

音が冷たく感じられることがある

当記事があなたの補聴器選びの参考になれば幸いです。

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