2025年には高齢者の5人に1人、国民の17人 に1人が認知症になると予測され、いまよりさらに認知症の方が身近になります。実は難聴が認知症と深い関わりがあるのはご存知でしたか?
今回、認知症と難聴の関わりを認知症とは、種類、原因などについて詳しくご説明します。
<目次>
認知症とは?
認知症とは、認知機能の低下によって社会生活や日常生活に支障をきたした状態です。間違われやすいですが、認知症とは病気によって引き起こされた症状のことをさします。
つまり原因となる病気は別にあるということです
4大認知症
認知症を発症する病気は大きく4つに分けられ、これらを「4大認知症」と呼ばれています。4大認知症は次の通りです。
・アルツハイマー型認知症(67.6%)
・脳血管性認知症(19.5%)
・レビー小体型認知症(4.3%)
・前頭側頭型認知症(1%)
※その他7.6% ※平成30年度「認知症初期集中支援チーム員研究会」資料より 次で上から順にご説明します。
アルツハイマー型認知症
認知症の中でも最も多いのがアルツハイマー型です。全体の約7割を占めます。アルツハイマー型はアミロイドβの蓄積や神経原線維変化が脳の広範囲に出現し、神経細胞が障害されることで発症します。脳の画像では海馬やその周辺に萎縮が見られます。
脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血・くも膜下出血などが原因で発症する認知症が脳血管性認知症です。症状は障害を受けた脳の部位によって異なります。症状の進行速度は人によって違い、アルツハイマー型認知症が合併することもあります。
レビー小体型認知症
レビー小体という異常なタンパク質が溜まることで神経細胞が障害され発症します。脳の画像では目立った萎縮が見られないことが多いです。初期には幻視・妄想やパーキンソン症状が現れ、調子のよい時と悪い時を繰り返しながら進行。場合によっては急速に進行する認知症がレビー小体型認知症です。
前頭側頭型認知症
前頭用と側頭葉を中心とする神経細胞が障害されることで発症する認知症が前頭側頭型認知症です。画像では前頭葉と側頭葉に顕著な脳の萎縮が確認されます。初期症状では同じことを何度も繰り返すなどの行動が見られ、行動の変化や言語障害などの特徴的な症状があります。
認知症のサインや症状
認知症は「中核症状」と「行動・心理症状」の二つに分けられます。中核症状とは、脳の神経細胞が死んでくことによって直接発症する症状のこと。行動・心理症状は中核症状的引き起こされる二次的症状のことです。
例:時間や場所が分からなくなり(中核症状)、精神的に落ち込み鬱になる(行動・心理症状)
他にも次のような症状があります。
中核症状
同じ話を繰り返す
同じものを何度も購入する
周囲の会話についていけず理解が難しくなる
読書好きの人が本を読まなくなる
行動・心理症状
精神的混乱や落ち込み
楽しみだった活動をやめてしまう
人付き合いを避けるようになる
怒りっぽくなる
では、上記の症状が家族に見られた場合、周囲はどのように接すればよいのでしょうか?
認知症の方への上手な接し方
認知症は中核症状によって記憶がすっぽりと抜けてしまうことから、伝えても忘れてしまうだろうと周りは思ってしまいがちです。ただ行動・心理症状からわかるようにご本人様も自信の状態に不安を抱かれているもの。なるべく下記のことに注意して接してみて下さい。
ご本人様のペースに合わせる
用件は簡単・簡潔に伝える
コミュニケーションをはかる
また、認知症というのは本人だけでなく周囲にも負担があります。自分だけで抱え込まず認知症カフェなどを利用して周囲に協力を求めることも大切です。
難聴と認知症の関係
2017年の国際アルツハイマー病会議(AAIC)で、ランセット国際委員会が「難聴」は「高血圧」「肥満」糖尿病」などとともに認知症の危険因子の一つと報告しました。
さらに2020年には「予防可能な40%の12の要因の中で、難聴は認知症の最も大きな危険因子である」と報告されたのはご存知ですか?
・中年期の聴力低下 9%
・中等度教育の未修了 8%
・喫煙 5%
・うつ 4%
・運動不足 3%
・社会的孤立 2%
・高血圧 2%
・肥満 1%
・2型糖尿病 1%
このように様々な研究から難聴があると認知症を発症する確率が上昇すると報告されています。最近の海外の研究でも中年期以降に難聴があれば認知症のリスクがおよそ2倍上昇するというデータも。難聴と認知症は関わりが深いのです。
難聴と認知機能の因果関係
ただ難聴があると認知症を発症する確率が上昇する、というデータはありますが因果関係は明らかではありません。いくつか認知症と難聴の因果関係として有力視されている説がありますのでご紹介します。
認知負荷仮説
認知機能の低下が感覚機能低下である難聴を進行させるという説です。聴力が低下して聞き取れない音が増えると脳は一生懸命音を聞こうとします。そうすると、脳に他の働きをする余裕が減り、結果として全体的な認知能力が低下します。
カスケード説
難聴で聴覚に入力が少なくなると、脳への刺激が減るので容積が小さくなり認知機能が低下するといった説です。 神経活動の低下が起こりその結果、脳の構造変化が生じ脳容積も小さくなり認知機能が低下します。
共通病因仮説
難聴と認知障害のどちらも老化した脳における組織や細胞の減退で起こっているという説です。一般的な脳の老化で発生するため、難聴と認知障害が同時に発生すると考えられています。
では、最後に認知症の予防に補聴器が有効であるか?といった点に触れたいと思います。
認知症に補聴器は有効?
フランスのボルドー大学のエレン・アミーバ教授が65歳以上の3670人を対象に耳の聞こえ具合と認知機能との関係を検証しました。
その結果、難聴があるのに補聴器を装用していない人は補聴器を装用している人や難聴のない人と比べて認知評価スコアが低下していること、さらに、積極的な補聴器の装用で社会的な活動を増すことにより難聴に起因する認定機能低下のリスクが減少することが明らかになりました。
以上のことから、補聴器を使用して聞こえを維持することは大切なことがわかります。
まとめ
認知症とは、病気が原因で発症する症状のことです。認知症が発症する原因は様々ですが、予防できる原因の1位は中年期以降の難聴です。そして、加齢性難聴には補聴器が有効です。