難聴があると転倒リスクが高くなる?高齢者に多い原因と予防の考え方

難聴があると転倒リスクが高くなる?高齢者に多い原因と予防の考え方

難聴があると転倒しやすくなります。高齢であるほど、その傾向は顕著です。

近年、聴覚の低下(一般に「加齢性難聴」)が「転倒・骨折」の危険因子になることが、複数の研究で分かってきています。では、なぜ「聞こえが悪いこと」が転倒につながるのでしょうか。

今回は、難聴があると転倒リスクが高くなる理由、高齢者の転倒が軽視できない理由、そして転倒を防ぐための方法についてご説明します。

監修者
hakamata
袴田 ゆかり(はかまた ゆかり   きこえのお助け隊
認定補聴器技能者の資格を持つ女性リーダーとして、スタッフを束ねながら活躍しています。これまでに多くの補聴器使用者と接し、その豊富な経験を活かして、皆様に信頼できる情報をお届けしています。補聴器を利用される方だけでなく、そのご家族や周囲の方々も含め、補聴器に関わる全ての方がより快適に過ごせるよう、誠心誠意サポートいたします。

難聴があると転倒リスクが高くなる理由

難聴があると転倒リスクが高くなる原因には、次のような理由が考えられます。

  • 周囲の音情報が限定されている
  • 聴覚情報が制限されると足元が不安定になる
  • 歩行速度の低下が転倒リスクをさらに押し上げる

次に、上から順に説明します。

周囲の音情報が限定されている

聞こえが悪くなると、周囲から入ってくる「音の情報」が少なくなります。

例えば、他人が近づいてくる足音、話し声、家具のきしみ音などに気づきにくくなることがあります。 その結果として、「急に近くに人がいた」「足元に障害物があった」などに驚いて転んでしまう可能性が上がります。

このように、音が聞こえにくいことで、歩行中や立っているときに重要な「音による環境認知」が弱まり、結果として転倒してしまうことが考えられます。

聴覚情報が制限されると足元が不安定になる

難聴のため、聞き取りを意識するあまり、身体の他の機能(例えば足元を見て歩く、障害物を避けるなど)が疎かになる可能性があります。

東京都健康長寿医療センターの研究では、聞こえが悪いと障害物を避けるための足上げ動作や歩幅のばらつきが大きくなったという報告があります。

これは若年者(聴覚・視覚を人工的に遮断)を対象に、「イヤーマフ(聴覚遮断)」と「視覚フレーム(視野制限)」を組み合わせて歩行を観察した実験で、「聴覚遮断+視覚遮断」では足上げ動作や歩幅のばらつきが大きくなったというものです。

つまり、聴覚情報には運動を安定させる働きがあり、それが制限されると結果として転倒につながる可能性があるということです。

歩行速度の低下が転倒リスクをさらに押し上げる

東京都健康長寿医療センターでは、歩行速度の低下と難聴による転倒リスクについても研究が行われています。

この研究では、「難聴+歩行速度が遅い」という組み合わせの人は、転倒や骨折のリスクが大きく上がることが報告されています。 調査は1年以上をかけ、786人を対象に実施されました。

その結果、難聴だけでは転倒リスクが大きく変化するわけではありませんでしたが、歩行速度が遅い人では転倒リスクが上がり、さらに「難聴+低歩行速度」では複数回の転倒や骨折ともに有意にリスクが上昇する結果となりました。

このように、「聞こえが悪い」という状態が歩行や移動の機能低下と重なることで、転倒リスクは相乗的に高まると考えられます。

高齢者での転倒は軽視できない理由

高齢者の転倒や転落は、骨折、頭部外傷、長期の生活制限、寝たきりなど、重大な結果につながります。

厚生労働省の「令和4年国民生活基礎調査」によれば、高齢者が要介護になる主な原因のひとつが「骨折・転倒」であり、その割合はおよそ13.9%を占めています。

また、同省の「令和4年人口動態統計」では、高齢者の転倒・転落・墜落による死亡者数は10,809人にのぼり、交通事故による死亡者数よりも多いというデータもあります。

つまり、聞こえや歩行、バランスといった機能の低下を早めに捉え、対策を講じることは、転倒予防・寝たきり予防・生活の質の維持につながるのです。

高齢者の転倒をどう対策すればよいか

高齢者の転倒リスク対策には、「環境的」と「身体的」の二つの側面からのアプローチがあります。

環境的対策では、手すりの設置、段差の解消、滑りやすい床や障害物の除去などが挙げられます。本人以外の環境面を整えることで、転倒を防ぐことができます。 身体的な維持としては、歩行速度を落とさないために、筋力やバランス感覚を保つ運動を行うことが有効です。

またここまで説明してきたように、難聴がある場合は転倒リスクが高くなります。そのため、必要があれば補聴器などを装用することも一つの手段です。補聴器を装用することで、音による環境認知や注意の分散が改善される可能性があります。

このように、聞こえ、歩行、バランス、環境整備を併せて考えることで、より効果的な転倒予防が可能となります。

まとめ

高齢者にとって、難聴があると転倒リスクが上がるという関係は、いまだに結論が明らかではありません。

しかし、様々な研究がなされており、次のような可能性が考えられます。

  • 聞こえる音が少ないことで「近くに人・障害物・段差」がわかりにくくなる。
  • 聴覚機能が制限されることで、歩行や移動のバランス制御が乱れやすくなる。
  • 聴覚低下以外にも、認知・注意・身体機能低下・歩行速度低下といった要因が重なり、「難聴+身体機能低下」の組み合わせでリスクが特に高まる。

転倒は骨折、介護、生活制限といった重大な結果につながるため、聞こえ、歩行、環境の三つの視点を併せて備えることが重要です。

当記事があなたの参考になれば幸いです。

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